■第二部■ プログラム編 - 8 - 真実の姿






「は〜い、こんにちは〜山本で〜す。ただいま正午12時で〜す。みんなぁ生きてるかぁ?
新たな犠牲者です。
女子5番 冬野 美春・・・これだけですね。
禁止エリアはA7、D1、E5、G3、H8です。次回禁止エリアはA5、A8、D3、G5、H1ですよ。
みんなぁ殺戮ペースが落ちてきているぞ。つらいかもしれないですがこれが現実であり真実です。」

(くそっ、あと3時間しかないのか・・・俺はどうすればいいんだ)
立花 陽平(男子7番)は柳生の伝言を聞いて驚きがまだ収まっていない。
そして焦っていた。またなにもできない自分が嫌になった。
(また死んだのか・・・一体誰が)
武車 健太(男子10番)はクラスの仲間が次々と消えていったのを不思議に思っていた。
(でもこんな時こそ冷静にならなくては・・・陽ちゃんがこんな状態だし)
陽平は起きてから下を向いたままだ。
(柳生さんのことが相当ショックだったんだろうな・・・でも)
健太は思い切り陽平の頬にビンタをくらわせた。
「いってぇ〜なにすんだよ。」
「落ち込んでるなんて陽ちゃんには向かないな・・・でどうするんだ?」
「健ちゃん、俺に何ができると思う?」
「いきなりそんなこと聞くなってか俺の質問に先答えろ。」
「分からない、どうしたらいいか、まったく分からない。」
「答えになってない。」
「じゃあ健ちゃんはどうすればいいか分かるのか!!!?」
「・・・・・。」
「なんで黙ってるんだよ!」
「そう感情的になるな。」
「五月蝿い!俺の気持ちなんて全然分かってないくせに!」
健太はドキッとした。
柳生 美穂(女子8番)にも同じことを言われたからだ。
「ああ、そうだ。俺に今の陽ちゃんの気持ちなんて分からないよ。だがな」
「だがな?」
「これだけは言える。自分のしたいと思うことしろ。俺は陽ちゃんのすることに反対はしない。」
「・・・俺は柳生さんもクラスの皆も救いたい。」
「そう思うならこれからすればいいかは自分でも分かるはずだ。俺は陽ちゃんの言うとおりに動く。」
「政府をぶったおす。それしかないな。」
「そのとおり。その前にメンバーを集めないとな。」
「そうだな・・・俺、がんばって柳生さんを説得してみる。」
「その意気だ。がんばろうぜ。」
二人は再び握手を交わした。

(今で5人かぁ・・・早いなぁ。ご愁傷様やな)
江井原 大輔(男子3番)はそんなことを思いながら民家地帯の一軒で探し物をしていた。
(てか殺とんのほとんどわいやし。それより髪染めたの落とすやつどれやろ?)
大輔は家の洗面台の方でそれを探していた。
「おっ、これやこれ。なになに・・・ふむふむ。」
大輔はパッケージの説明部分を大体読んだあと、一思いに薬を髪に塗りたくった。
大輔の髪の色はどんどん白くなっていく。
大輔は最後に頭を洗って鏡を見た。
(久々やな、この姿・・・わいの本当の姿。空ちゃんこれ見たら驚くやろうなぁ。)
それは混じり気のない真っ白な髪だった。
(そうあの朝や。確か一中学校に転校した時や。あれ以来やな。)
その時後ろに気配を感じた。大輔はぱっと振り返った。
そこには両端が破けてスリットみたいになったスカートをはいた女の子が立っていた。
「大輔くん!?」
「空ちゃん!?」
言うタイミングが見事に重なった。
そう、そこに立っていたのは
鷹山 空(女子1番)だった。
「だ、大輔くんどうしたのその髪・・・真っ白だよ。」
「それにはわけが、って空ちゃんもどないしたん?その格好。」
空は自分の服装を確認した。スカートの両端が破れているのに気が付き顔を赤らめた。
大輔はそっと自分の学ランを渡した。
「ちょっとでかいかもしれへんけど。それやったらスカートも隠れるやろ。」
空は受け取り着てみた。すっぽりスカートが入ってしまった。
(とっても温かいよ。大輔くんの体温なんだね。)
「あっ、本当だ。スカート全部入ちゃったよ。」
「はは、そらそうやろわい身長そこそこあるし空ちゃんスカート折ってるし。」
「余計なことはいわなくていいよ。」
「そらわるうござんした。」
少しの静寂・・・
「それでどうしたのその髪・・・もしかして染めた?」
「そんなことあるかいな。逆や逆。黒に染めとったんや。」
「生まれてきたときから?」
「ちゃうちゃう。そやなぁ簡単に言うとストレスのせいやな。ストレスを極限までためると髪の色がなくなんねん。」
「いつごろから?」
「確か一中入ってくる前や。朝起きたら昨日まで黒やったんが真っ白になっとたんや。」
「なんか青い目に白の髪って・・・かっこいいね。」
大輔は「汚い」とか「気味悪い」とか言われる覚悟をしていたが以外な返事が来たのびっくりした。
「そうかなぁ。空ちゃんにそういってもらえるとうれしいわぁ。」
(あかん、わいは空ちゃんだけには手ぇだせへん・・・なんでやろ武器もあるし、いままで普通にしてきたのに)
大輔は自分の感情に負けてしまったのだ。それと不思議に思った。
(最初に「全員殺す」とかいっておきながら空ちゃんを殺せへんなんて情けないなぁ、わい。それに空ちゃんも空ちゃんやで。殺人宣言したわいになんでこう接して来れるんやろ・・・やっぱ空ちゃんは謎やわ)
だから聞いてみることにした。
「わい最初に殺すゆうたと思たけど、なんで空ちゃんはわい近づいたんや?」
「そ、それは・・・・」
空はドキドキしてるのが自分でもよく分かった。
「実は・・・・」
「んん?どないしたんよ。」
「さっき山下くんと川村くんがいて声をかけたら・・・うっ、うっうう。」
「ええ!?急に泣かれても困んねんけど・・・」
大輔は頭をポリポリかきながら立ち上がり空の背後から抱きついた。
「なんか怖いことがあったんやろ・・・ゆうてみぃ。」
「山下くんが急に襲い掛かってきたの・・・女ぁ!!っていいながら。」
「うんうん、大体想像はつくけど・・・だからここまで逃げてきたんやな?」
「そう・・・そしたら大輔くんがいて、だから。」
「そかそか、よぉ分かった。せやさかいそんな哀しい目ぇせんといてなぁ。泣きやまへんのやったらこうや。」
大輔は空を正面に向かせ、唇を奪った。
空はええ!?という顔していた。
そして唇を離して
「はぁ〜、これが空ちゃんの前で見せる最後の江井原 大輔や。次会うときは空ちゃんでも容赦せぇへんでぇ。」
「え!?」
「そやなぁ。まあ次会うときはあの世かもしれんなぁ。そん時は唇だけやなくて体も食わしてもらうで・・・な〜んてなぁ。冗談やで。」
「ちょっと待って!一緒にいてくれないの?」
「確かに一緒にいてやりたいのはやまやまなんやけど・・・わいはいかなあかんねん。政府をぶっつぶすためになぁ。」
大輔はドアを開けた。空は大輔の白の髪が輝いているように見えた。
「本当にいってしまうの?」
「しゃあない。復讐やもん、家族のな。そこに空ちゃんがおったらあかんねん。」
「行かないで!!」
空は抱きついた。
(なんやこのドラマ展開は・・・いややなぁこうゆうの)
「好きなってもええやろ。」
「うん。」
「わいは好きな人間には迷惑かけたくないねん。分かってくれ。なっ?」
大輔はぐいっと空を離した。
そしていつもの(にこっ)の笑いをして走り去った。
空は自分の支給武器であるレーダーを見た。
1つの点が自分から離れていくのが分かった。
(わたしも好きだよ・・・あなたのことが)

山下 達也(男子11番)川村 安武(男子4番)かぁ。覚悟せぇよ。わいの大切な人に危害を加えたことは大きいでぇ!)
大輔は気持ちを新たに闇の世界へと入っていく。




                    感情それは人間の真実の姿を表す


【残り15人】と井上 和男


ノンフレーム目次