■第二部■ プログラム編 - 6 - 黒き力






「ただいま午前0時です。みなさん元気にしていますか?さっそく犠牲者がでています。男子は1番 荒木 孝則 女子は6番 前田 菜々子 7番 武藤 瑠璃です。続いて禁止エリアはAの1〜4、Bの1〜4、Cの1〜4です。次回の禁止エリアはB6、E8、F1、G4、H6ですよぉ。もう殺る気になってる人もいます。みなさん気をつけて殺しあってくださ〜い。」

成本 愛子(女子2番)は泣き崩れた。
(えぇ?菜々子、瑠璃がそんな・・・)
愛子はしばらく立てなかった。
あまりのショックで我を失いそうなったがすぐ我に返った。
(わたしが菜々子や瑠璃の分も生きなきゃ。まず立花くんを探そう。)
愛子は反乱を決意した。

(くそっ、陽ちゃんどこにいるんだ)
武車 健太(男子10番)は歩き回っていた。
もう真夜中なのでなにがあるかも分からない状況だった。
(仕方ない、夜が明けるのを待とう)
そう思って腰を下ろしバックを開けた。
「これが俺の支給武器かぁ、んん?張り紙があるぞ。」
ボウガン・・・矢を放つ道具。矢をセットし、引き金を引く。予備の矢は15本
(そのぐらいガキでも分かるつ〜の)
いつものつっこみがでたところで睡魔が襲ってきた。
(少しぐらい大丈夫だろう)
健太は寝てしまった。

(う〜ん・・・今何時だぁ?)
松元 和也(男子9番)は起きた。始まってからずっと寝てたみたいだ。
(んん?午前3時?やべぇ。禁止エリア聞いてねぇ。まあいいか。どうせここは大丈夫だろう。明るくなるまで動かない方がいいな。)

柳生 美穂(女子8番)は精神統一をしていた。来るべき戦いに備えて万全を張ろうとしている。
そこに
佐々木 守(男子6番)の姿があった。
(なんでこんなやつのガードしないといけないんだよ。まあ殺されるよりマシだけど)
守は美穂の刀を狙って襲い掛かったがあえなく敗北した。
そのせいで守は肩を斬られて止血しているところだった。
(まだ痛むぜ。ちくしょう・・・でも柳生って案外いいやつかもしれない。襲った俺に止血をし、殺さなかった。意味不明だよ。)
美穂がいきなり立ちだした。
「お、おい。」
「ここは任せたよ。誰か来る。」
「な、無責任な俺に囮になれっていうのか?」
「命を助けてやったんだ。これぐらい当然だ。」
「ちぃ、さっさと行け。」
(やっぱ信用するんじゃなかった。)
美穂が走っていって20秒後ぐらい経ってから人間の姿が見えた。
守の前に立っていたのは女子NO.1の俊足 
藤林 陸(女子4番)だった。
「あたしは死にたくない。だからこのクラス全員殺す。ふふふ。」
陸は片手に剣を持ちながら言った。
(こいつ完全にいっちまってる。くそぉ、逃げないと)
守は必死に逃げた。しかし、女子といってもNO.1の彼女には足で勝てるはずもないのは分かっていたが体が勝手に動いた。守は後ろから気配が消えたのに気付いた。
(どうしちまったんだ?まあ逃げ切れてなによりだ。)
守は日が昇ってくるのが分かった。時計を見た午前5時半だった。

「う、うぅ〜 い、痛い 誰?誰かいるんでしょ?出てきなさい!!」
木陰から一人の少年が出てきた。
江井原 大輔(男子3番)だった。
「わいや、わい。背中にナイフ命中したはずやのに元気そうやなぁ。」
陸はその言葉に驚いた。急に痛みがでてきた。
「なんのよ!あたしの邪魔をするならあんたも死んでもらうよ。」
「お〜怖い怖い。そんな体でわいに勝てるんかいな。たぶん無理やと思うでぇ。」
「五月蝿い。問答無用。」
陸は背負っていたバックを降ろし、剣を柄から引き抜いた。綺麗な銀色の刃が姿を見せた。
「アーサー王伝説って知っている?これはそのアーサー王が使っていたという伝説の剣エクスカリバーっていうみたいよ。そしてこの剣で悪を追い払った。今のあんたにはうってつけね。」
「へぇ〜。でもなんでうってつけなんや?」
「あたしは見たのよ。あんたが武藤を殺したところをね。その時笑ってたでしょ。」
「見られとったかぁ。分からんかったわぁ。」
大輔はポリポリ頭をかいた。
「その時あたしは悟ったわ。あんたは地上に降り立った悪魔ってね。人を殺して笑うなんて人間のすることじゃないしね。」
「地上に降り立った悪魔かぁ。ええ響きや。今のわいにはぴったしかもなぁ。」
「あたしは目の前の悪を追い払わなくてならないの。だからあんたを殺す。」
「しゃあないなぁ。ほな 相手になったろう。」
大輔はバックを降ろし、戦闘の構えに入った。
陸はいきなり襲い掛かってきた。
(は、速い。)
大輔は最初の突きを転がりながら避けた。
(なんちゅうスピードや。NO.1は伊達やないちゅうことか。)
(くっ、避けられてしまった。背中が痛いから早く決着つけたいのに。)
陸の背中からは血が流れ続けていた。もう制服は血だらけだ。
陸は地面に転がった大輔を突きに掛かった。
(今度こそ)
大輔は見事に避け、すぐに立ち上がった。
「そんなんやったら。わいにかすりもせえへんでぇ。」
(なんのこいつは、もうこういう状況に慣れているように動いている。)
正直いうと陸は参っていた。
(これが最後の一撃。これで決める。)
陸は再度構えなおした。
「最後の一撃って感じやなぁ。じゃあちょっとだけわいの本気見せたろかぁ。」
陸は飛び掛かった。大輔は動かない。
(決まった!)
そう思った瞬間だった。大輔は見切ったように避け、陸の腕を掴んだ。
(どうして・・・)
大輔はにこっと笑った。そして手にいっぱい力を入れた。
「あ、あぁぁ!」
陸は人生において出したこともない女の子らしい悲鳴を上げ、剣を落としてしまった。
そして大輔は陸の鳩尾に渾身の拳をお見舞いした。陸は地面に沈んだ。
「ぐぅ。げほっ、げほっ。」
「藤林はんも女の子らしい声出せるんや。いつも男勝りな娘やから知らんかったわぁ。」
大輔は「新発見!」とも言わんばかりに言った。
(こんな時になんでこんなこと思いだすのだろう)

(小学校のグラウンドで)
「や〜い、藤林の鈍足〜」「なんでそんなに遅いんだぁ、亀さん♪」
「五月蝿いよ。う、うぅ〜うわ〜ん」
「おい、泣かすなよぉ。」「俺知〜らない。」「こら待ちやがれ。」
あの時だったけ、足が遅いのバカにされてたっけ。
「泣いていたって足が速くなるわけじゃないよ。そうだ今日から僕と走る練習しようよ。そしてあいつら見返そうよ。」
声をかけてくれたのは武車くんだっけ。あの時はとても嬉しかったなぁ。
あの後、武車くんと一緒に公園で練習したっけ。
そして次の年の運動会で優勝したんだっけ。
それから陸上の世界に入って・・・武車くん大丈夫かな?そんなことはどうでもいいか。もう死んじゃうし。

陸は涙を流していた。あの時以来の涙だった。
「あ〜あ、女の子相手に少々強すぎたかなぁ?まあええか。最初にわいはゆうたしなぁ。見つけたやつから殺すって。」
大輔は陸が落とした剣を拾い上げ持ってみた。
「以外に軽いもんやなぁ。残念やけど剣のほうはわいを選んだみたいやなぁ。勇敢に立ち向かった勇気を称えて苦しまず殺したるわぁ。」
大輔は陸の頭を蹴り、お腹を思い切り踏みつけた。そして・・・
ドスッ。心臓を一突きした。刺さったところからものすごい量の血が出てきた。
陸は痙攣を繰り返した後、動かなくなった。
大輔は死体を裏返しナイフを抜いて血を払い、腰に挿した。
(悪いなぁ。わいにはせなあかんことがあるねん。確かにわいの殺し方は残酷かもしれん。でも政府のやつはもっと残酷にわいの大事な家族を殺したんや。)
大輔は陸が目が開いたままになっているのに気付き、そっと目を閉じてやった。
そしてエクスカリバーを柄に納め、ベルトに引っ掛けた。
日が昇るのが見えた。
(わいの才能・・・それは生まれながら持ってた戦闘能力や。そんな才能なかったらこんなことせんでもよかってんけどなぁ。)
青い目はさらに深みを増していた。




            才能・・・それはだれも選ぶことはできない。


 死亡 女子4番 藤林 陸
刺殺


【残り16人】と井上 和男


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