■第二部■ プログラム編 - 5 - 希望と絶望 |
川村 安武(男子4番)はE2の神社に来ていた。 (僕には信用できる人なんていない・・・どうしたらいいんだろ) 安武は少し落ち込みぎみだった。 支給武器はヌンチャクだった。 張り紙には「ヌンチャク・・・振り回して相手を叩く道具」と書かれていた。 (こんなものは役に立たない・・・ちくちょう!) 安武は支給されたパンをかじりながらその小さな体で考えた。 でもいくら考えてもいい考えが浮かばなかった。 (あ〜あ、もう一度柔道したいなぁ。) 放課後 「一本!そこまで」安武は見事に投げられてしまった。 「川村!!やる気あるのか!しっかりやらんかぁ!」 またしても顧問の先生に怒られてしまった。 安武は泣きそうな顔になった。 「泣いて強くなれるわけじゃないんだぞ。しっかりせんかぁ!」 「は、はい!」 安武は最後まで練習していた。同じクラスの丸坊主の巨人 山下 達也(男子11番)もいっしょだった。 「ヤスは最後までがんばるな。体は小さくても心の強さは大きいな。」 「そんなことないよ。足引っ張ってるのは僕だし、これぐらいしないとダメと思うしね。」 「その調子だ。よ〜しじゃあ俺と一本やるか。」 「うん!」 (山下くん、今頃どうしているだろう。) 安武が思いふけていると目の前に一人の丸坊主の少年が現れた。 「や、山下くん!? どうしたの?」 山下は荒い息をしながら答えた。 「相手にしてくれそうなのはヤスぐらいしかいないからな。どうだ、組まないか?」 「僕もそう言おうと思ったところだよ。よろしく。」 2人は固く握手を交わした。 二宮 信人(男子8番)は妹の二宮 歌音(女子3番)を探していた。 (歌音、何処にいるんだ。) 信人は今E6辺りにいた。時計は午後10時になっていた。 (んん?近くに小屋があるな。少し疲れたし、仮眠を取るのも悪くない。禁止エリアはABCの1〜4だしな。) 信人は疲れているのを我慢し小屋へと足を向けた。3分もしないうちに小屋についた。 (この島けっこう狭いのかもしれないな。) 信人はドアにもたれるようにして銃を構えながら耳をすました。中に誰がいるかも分からなかったからだ。 支給されたのはマシンガンのようだった。張り紙によると 「P−90・・・サブマシンガン。両手で撃ちましょう。50発連射可能。予備マガジン2本。」 四角い変な形のマシンガンだった。 ドアの向こうから泣いている声が聞こえた。 (この声は・・・歌音!?) 信人はドアを開け呼んだ。 「歌音!?歌音だろ?返事してくれ!」 「兄さん!?兄さんなの?良かった・・・」 歌音は電気をつけ、カーテンを閉めた。 「歌音・・・無事だったか。ほんとうによかった。」 「わたしも兄さんに会えてよかった。」 二人はアツい抱擁を交わした後、キスした。それはいままでの恐怖をすべて流してくれた。 「歌音、安心していいよ。俺がお前を守ってみせるからな。」 「ありがとう、兄さん。」 二人はしばらくの間抱きしめあったままだった。 小宮山 大吾(男子5番)はハッキングプログラム製作をしているところだった。 「和久井さん、あとちょっとでできそうだ。」 和久井 優子(女子9番)は退屈そうに待っていた。 「あとちょっとってどのぐらい?」 「う〜んあと8時間ぐらいかな?」 「それのどこがちょっとなのよ!マジでいってるの?」 「な、失礼な。これを作るのに8ヶ月も使ってるのにそれはないだろ。」 「は、8ヶ月?うわ〜よく飽きないね。」 「大きなお世話だ。」 大吾は再びPCに向かった。 「和久井さん。」 「優子でいいよ。・・・で何?」 「接続とか手伝ってくれてありがとな。」 優子は突然大吾に抱きついた。 「お、おい!?」 (胸があたってるんですけど) 「どう?ビックリした?」 「当たり前だろ。」 (胸のでかさにも) 「実は言いたいことがあるんだ。」 優子は抱きついたまま言った。 「なんだ?」 「う、うん。実は・・・あたし・・・大吾のことが好きなんだ。」 「んん?大吾?珍しいな名前で呼ぶやつ。ってええぇぇぇ!?こ、こんなメガネ野郎のどこがいいんだよ?」 「・・・大吾の全て。」 「ほんとに分からない人だなぁ和久井さんは」 「だから優子って呼んでっていったでしょう。」 どちらも放心状態で咬みまくっていた。 (確かに和久井さんはナイスプロポーションでおまけにアイドル顔負けのルックス将来モデルもいける人だ。好きっていわれたのもうれしいが) 「何か隠してない?」 「・・・大吾のバカ。」 「悪かったよ和久井さん。疑ったりして。」 「だから優子って呼んでよ。」 「ごめん、優子。」 大吾はPCをまたカタカタ始めた。優子は抱きついたままだ。 (今は至福のこの時を味わっておこう。もう二度とないかもしれないしな。) (やっと、伝えれた。大吾・・・あんたは誰にも渡さないよ。そしてもう放さないよ。) 友情、愛。それは全て偽りのもの。そして他人によって壊されるもの。 |
【残り17人】と井上 和男 |
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