■第二部■ プログラム編 - 22- 決戦 |
江井原 大輔(男子3番)が発砲すると同時に立花 陽平(男子7番)と柳生 美穂(女子8番)は二手に別れ大輔を囲う作戦に出た。 武車 健太(男子10番)は弾丸が当たらないように伏せて、成本 愛子(女子2番)が所持していたボウガンを拾いに行った。 大輔は二手に別れたのが分かったとたんフルオートにしてあるP−90で撃ちながら美穂をけん制しつつ陽平のほうに走った。 美穂はすばやい動きで全ての弾丸を走りながら避けた。 (武車はんはボウガン握るまではなんもして来おへん。まずは委員長はんを足止めしておいて、柳生はんを殺す。武車はんは最後でええ。 あんな下手な銃はわいには当たらん。ちっ、そろそろ弾切れや。) 1分間に900発撃てるマシンガンだ。50発程度は軽く無くなる。大輔は弾切れのP−90の本体を美穂に投げつけた。 見事に美穂の腹部に的中し、美穂はうずくまってしまった。陽平までの距離はあと5メートルだ。 陽平は完璧な戦闘態勢に入っていた。刀を前に構え、じっと大輔の初断ちを待っていた。 (あほやなぁ、あんたは観察不足なんや。いままでわいの何処見とったんや。) 大輔は左手に軍用ナイフ、右手にエクスカリバーの両方を逆手持ちで握り、エクスカリバーを陽平に向けて振った。 陽平は間一髪のところでエクスカリバーの動きを刀で止めたが読みが甘かった。 左手のナイフが陽平の右腕に傷を入れていた。陽平の右腕から血が滴り落ちていた。 「そんなんやったら勝てへんでぇ。これはなぁ、馴れ合いやないねんでぇ。あと、わいはな・・・両利きや。」 少しの静止の状態で大輔はつぶやいた。後ろからさっきまでうずくまっていた美穂が斬りかかってきた。 大輔は陽平の腹部を思い切り蹴り飛ばし、美穂の太刀をみきり右に転がりながら避けた。美穂の動きが少し止まった。 左肩に矢を受けていた。もちろん健太が放った矢だ。 「あんたは本気になっとうみたいやけど、周囲に目がいっとらんねん。状況判断もでけへんかぁ?柳生の名も落ちたもんやなぁ。」 それを聞いて美穂は怒りをあらわにし、思い切り刀を振りました。大輔はいとも簡単にその太刀を交わす。 そして周囲の状況もしっかり把握していた。陽平はひどい息遣いで立ち上がりこちらに向かってくる。健太は矢の装てん中だ。 (ちっ、二人相手かぁ、ちときついなぁ。ほんならこうするしかないな。) 大輔は相手をしていた美穂の太刀を転がりながらかわしそのあとバック転を加えながら後ろに後退した。 そして美穂と陽平のWの攻撃を耐えることとなった。大輔はうまい具合に美穂と陽平を引き付け、健太にボウガンを撃たせない状況にしたてた。健太はボウガンをしっかり構え、思った。 (くそっ、あれじゃ迂闊にボウガンも撃てない。しかし、あいつ何者だ?あの身のこなしはなんだ?何故か分からないがあいつはこういう状況になれているのだろうか?恐ろしいやつだなぁ。) 一方、大輔は苦しい展開だった。美穂の綺麗な太刀筋、陽平の雑ながら重い太刀筋、左右両方から攻められていてすごく不利な状況だった がしかし、チャンスが訪れた。美穂の太刀筋が甘くなってきたのだ。 (元々、剣術ゆうもんは一撃必殺がメインなんや。一振りに渾身の力を込める。それが剣術の基本や、だから女子なんかの体力やったらこのぐらいもてばええほうや。残念やけど、あんたはわいに負ける。) 大輔はいままで交互の攻撃だったものが同時きたのを境に刀を受け止めたあと、美穂の足元に思い切り蹴りを入れた。 メキッという何かが折れたような音がした。美穂は音と同時に「きゃっ」と小さい悲鳴を上げて倒れこんだ。 しかし、大輔の行動は誤算だった。倒れたと同時に健太はボウガンを放った。放たれた矢は大輔の足に刺さった。 陽平はこれをチャンスだと思い、一気にかたをつけるべく刀をいままで以上のスピードで振った。 だが、大輔の太刀筋は一向に衰えない。代わりに陽平の太刀筋が衰えてきた。ここまで長く刀を持ったのは初めてだったからだ。 刀といっても本物だから軽く見積っても4キロ以上はある。中学生には少し重い。 大輔は衰えてきているのが分かったので勝負に出た。ナイフとエクスカリバーをクロスさせて陽平の刀を受け止め、またも足に狙いを定め蹴った。陽平の天性の反射神経で早めに避けることはできたが代わりにバランスを崩してしまった。大輔は一瞬の隙を逃さずナイフで陽平の肩を刺した。それで気が抜けてしまったのか陽平は崩れ落ちてしまった。 大輔は愛子の死体に向かって歩き出した。その間に健太はボウガンを何回も放ったがことごとくかわされてしまった。そして死体からナイフを抜くと 「さっきもゆうたけどそんな手ぇ震えとったら当たらんでぇ。」 その言葉の後、抜いたナイフを健太に投げつけた。健太は投げると分かっていて右側に避けたが読まれていたのか見事に肩に命中した。刺さったところから血がにじみ出てくる。 大輔は呆れた表情で近くにあった木の根元に座った。 陽平は激しい息をしながら自分のカッターシャツの腕部分を破き肩に止血し、美穂はあまりの激痛に涙が止まらなかった。健太は初めて味わった恐怖に震えていた。 「ほんまあんたら弱いわぁ・・・呆れるわぁ。剣道全国2位、女子1位に射撃部。こないなパーティ揃えてこの程度かぁ・・・話にならへんわぁ。あんたらのことよぉ知っとるでぇ。立花陽平、この世界唯一の二刀流剣術の立花 清十郎の孫。柳生美穂、江戸時代に栄えた柳生家の分家の娘。武車健太、去年の県内射撃大会準優勝者。やろ?そんなやつらが少年一人に全員重傷。最悪の結果やなぁ。」 大輔は首にいつもぶら下げてあるペンダントの中を確認した。パカッと開くタイプのもので中に写真などが入れれるものだ。 健太が声を震わせながら言った。 「お前、何者なんだ?絶対普通の人間じゃねぇ。」 「ほぁ〜、まだしゃべれる元気あるんかいな。そやなぁ冥土の土産に教えたろかぁ。わいは反政府撲滅部隊「CHILDREN」に所属しとった人間や。わいはな、あんたら知らんような世界で生活しとったんや。わいは4歳のころ、妹の海と一緒に母親に捨てられたんや。そんでな、政府の孤児院に預けられたんや。孤児院なんてゆうのは名前だけやった、あそこは反政府撲滅部隊の人間を養成するところやったんや。わいは入ってすぐ仕事やで、海を養うためにはそうするしかなかったやんや。最初にわいに与えられた仕事なんやと思う?ショタコン女の性欲処理や。分かるか?そいつが満足いくまで体を提供しつづける。もちろんそれは夜の仕事や。朝から昼間は勉学と殺人術訓練で実習で部隊のメンバーと狩り出されるときもあったわぁ。殺らなきゃ殺られる、それがわいの生きとった世界や。初めて人殺したんは確か5歳のころや、夜の仕事中そいつが裏切り者ゆうことが分かったから殺した。わいにとってはそこいらの命なんてもんはどうでもええことやった。人を殺すのがわいの生きる道でわいの才能や。今の江井原家に拾われたのは10歳のころや、海と一緒になぁ。わいはまだこの仕事を続けとる。親や海が殺されたあともずぅ〜と修学旅行の前の日もなぁ。よぉあったやろ?授業中よく教室抜け出しとったやろ?あれは仕事がきたからや・・・もうええやろ。そろそろ殺したるわぁ。」 大輔が面倒くさそうに立った。その時、美穂が自分の刀を陽平に投げ言った。 「陽平、あんたの底力みせてやりな。あんたの二刀流で。あたいはもう戦えないから。」 陽平はその刀を受け取りまだ挿していないほうの腰に刀をもう1本挿した。これで両腰に刀があることになる。 「大輔、悪いが本気を出させてもらうよ。俺の全身全霊をかけてお前を倒す!健ちゃん、力貸してくれ。」 健太は立ち上がり刺さっていたナイフを抜き去りベレッタを構えて言った。 「任しておけ。陽ちゃんは刀に集中してればいい。」 じゃぁぁぁぁ、キンという効果音が入るのが適当なぐらいの勢いで陽平は腕を交差させながら刀を抜いた。右手に「三十六文字派生」、左手に「無銘」だ。陽平は深呼吸して息を整えた。目の色が代わっていくのが分かった。 「ん〜、そのぐらいの勢いが無いとわいもおもろないわぁ。まあええ、わいも本気でいくから・・・」 今度は陽平から突撃した。二刀流の基本は右手は守備、左手は攻撃だ。大輔の初太刀を右手でガードし左手で攻撃した、大輔はエクスカリバーでそれを止めたが誤算だった。健太のベレッタが火を噴いた。弾丸は見事に大輔のわき腹をとらえた。 血が勢いよく飛び出した。さすがの大輔もこれには耐えれずバランスを崩してしまった。すかさず健太はベレッタの最後を撃った。 見事に腹部の真ん中に命中し大輔は倒れた。陽平が動きを止め、健太がその隙に銃を撃つ。BESTな作戦だった。 しかし、大輔は再び立ち上がりいつもの笑顔で言った。 「わいはマシンガンの弾をなぁ、いままで何発も受けてきたんや、そんぐらいやったら死なへん。」 大輔はまたも陽平に斬りかかろうとするが朦朧とする意識の中だったので陽平も刀で受けなくても避けれる状態にまで弱っていた。 陽平は容赦なく大輔の左肩に向けて刀を下から振り上げた。大輔の左腕が肩の根元から斬りおとされ腕が宙を舞った。落ちた腕からナイフが外れないのがすごくグロテスクだった。 「わいは・・・空ちゃんのためにも負けれへんのや。絶対に。腕がなくなろうが足が使えんようになろうが目が見えんようになろうが。絶対許さんのや、政府のやつらを。」 大輔は右手のエクスカリバーで戦闘態勢に入っている。 (大輔、やめてくれ。もう俺はこれ以上・・・) 大輔のほうから攻めていった。エクスカリバーを無心に振っていた。陽平は急に攻められたため刀でそれを受け止めたがもう力はない。 息遣いも激しく、出血もひどい。腕を根元から斬りおとしたのでおびただしい血が流れている。腹部も同様だ。 そして、大輔はついに倒れた。そして仰向けになり陽平に話しかけた。 「あかん、わいの負けや。もう降参。てかもう目がかすれてほとんど見えへんわぁ。」 「大輔・・・」 陽平の目から自然と涙が出てきた。陽平には理由が分からなかったが。 「わい、もうそろそろ死ぬわぁ。そんぐらいは自分で分かる。でもなぁ・・・まだ未練が残っとうから成仏でけへんかもしれんなぁ。はよぉ空ちゃんとこ行きたいから委員長はんがわいの願い聞いてくれへんかなぁ?」 陽平は大輔が鷹山 空(女子一番)を殺したのを察した。陽平は空と大輔の関係を知っていたからそれが良く分かった。 大輔がもう完全に弱っているのが分かったのですぐに聞いてやることにした。 「大輔・・・分かった。俺にできることならなんでもやるぜ。」 「委員長はんやったらそういってくれると思ったわぁ。まず1、政府をしばいといてくれ。2、あんたらが反政府軍団作る時には「海」をメンバーに入れてやってくれ。3、わいを殺してくれ。」 「海ちゃん?なんのことだ?海ちゃんは死んだはず。」 「海は死体で見つかってないんや。もしかしたら生きとうかもしれん。わいの妹やから戦闘能力は気にせんでもええでぇ。それとこのペンダントも殺したあと、取っといてな。海に渡したってくれ。」 「分かった。見つけたら声をかけておくよ。」 「ありがとう、これでわいも空ちゃんの元にいけそうやな。もしなんか知りたいことがあるんやったらカズに聞きぃや。あいつやったら知ってること教えてくれるわぁ・・・もうええやろ、わいの心臓にこれを突き立てや。」 大輔はエクスカリバーを陽平に取らせた。陽平はそれを両手で握り構えた。 「わいがクラスメート殺しまわったのは咎めへんのか?」 「こういう状況だ、でも大輔は殺されることで罪を償おうとしているんだろ?俺が許せないのは政府だからな。」 「ほんまありがとう。ほな おおきになぁ。」 陽平は大輔の心臓にめがけて思い切りエクスカリバーを振り下ろし刺した。おびただしい量の血がでてきた。大輔はもう息をしていない。 大輔の首にかかっていたペンダントを取り、中身を確認した。鷹山空と海ちゃんが大輔を挟んで写真に写っていた。 陽平は美穂の方に近寄った。健太がすでに応急処置をしていた。あの鈍い音からして完全に折られているのだろう、足がバンバンに張っていた。美穂が初めに気付いた。 「あっ、それって。」 「そうだ、あいつがいつも身に着けていたペンダントだ。なかなか綺麗なもんだな。」 そのペンダントは銀に輝く獅子のデザインがあるものだった。裏には(14th HAPPY BIRTHDAY TO DAISUKE)と彫られてある。憶測だが空のプレゼントなのだろう。 「柳生さん、立てる?」 陽平は一応聞いてみた。 「無理に決まってるでしょう。」 「どうしようか?」 陽平は健太に聞いてみた。健太はハッキリ言った。 「そうだなぁ・・・じゃあ、柳生さんと陽ちゃんは待ち合わせ場所に戻っていなよ。俺が無線探してくるから、ね?」 「分かった。じゃあ頼んだ。」 健太は走っていった。まず探すのは民家地帯のF6の部分だ。 「それじゃあ、俺たちも行きますか。」 陽平は歩くことができない美穂をおんぶして待ち合わせ場所に戻ることにした。 「大丈夫か?柳生さん。」 「え?う、うん。あたいは大丈夫さ。それよりあんたよくやったもんだよ。」 「大輔のことか?たぶんやつは最初から死ぬつもりだったんだよ。本気なんて出していないだろう。」 「あんた、強くなったよ。あたい、強い男は好きだなぁ。」 「もしかして俺のこと?」 「さあ〜ねぇ。」 (あたい、やっぱりあんたのことが好きだったんだよ。今頃気付いた。強いからだけじゃない、あんたは・・・男のなかの男だ。) <C7 発電所> (なんだこの匂いは・・・まさか!?) 井上 和男(3−1担任)はドアを開けた。予測通り死体が置かれている。小宮山大吾のもののようだ。 1台のノートPCが電源がつきっぱなしだった。和男は画面を見た瞬間、笑みが浮かんだ。 (これは・・・ハッキングプログラム!!やった。これを少し改造すればOKだ。) 和男はノートPCの電源があと1つになっているのを見たのでプログラムを一旦保存し電源を消し、充電を始めた。 (あとは無線にかかっているな・・・頼むよ、私の生徒達。)和男は心の中で祈った。 青き目の銀色の獅子を救ったのは誠を貫く聖なる剣士であった。 |
死亡 | 男子3番 江井原 大輔 |
刺殺 |
【残り 3人】と井上 和男 |
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