■第二部■ プログラム編 - 16- 再会






立花 陽平(男子7番)は向こうの茂みがガサガサと動いたものを見た。
その影はどんどん離れていってやがて見えなくなった。
陽平は不審に思った。誰かがさっきまでここにいたというのが分かった。
その誰かを知りたいと思ったが検索のしようがないので諦めた。
でも確認のため
柳生 美穂(女子8番)武車 健太(男子10番)に聞いてみた。
「さっき向こうの茂みが揺れなかったか?」
美穂と健太は首を傾げ、こう言った。
「分からないけど、たぶん野犬じゃないかな?こういう島ならありそうなことだろ。」
陽平は納得はいかなかったが仕方なくそう思うことにした。
今はそんなことを考えている暇はなかった。一刻も早く井上先生を見つけないといけないからだ。
何故ここに来たかというと銃声がしたからだ。誰かが発砲したと思うからだ。
たぶん逃げていったのはその犯人だろう。
陽平は少し警戒した。もしかしたら殺された者がいるかもしれないからだ。
死体を見るのには抵抗があった。さっき川村と山下の死体を見てきたばかりだったからだ。
2人に共通されていたのは刺傷だった。心臓をえぐられたような刺傷だった。
柳生さんと健ちゃんはあれを見てからも話を続けている。忘れようとしているのかどうかは分からないが。
陽平は2人の死体を見てから新たな覚悟を決めた。
これからはクラスメートの死体がごろごろしている。でもそれから目を背けないと。
その人間の無念を晴らしてやろう。そう思った。
そんな考えをしている矢先だった。足に何かが当たった。鈍い金属音がした。
陽平は足元を見た。足に当たったのは銃であった。その銃を拾った。どこかの映画でみたことがあった。
そしてその銃を健太に差し出した。健太は急なことで驚いている。
「こんなもの拾ったよ。健ちゃんにはぴったりだろ?持っていこうぜ。」
「なんでこんなところに落ちてるんだよぉ。」
「さっきの銃声の正体だな・・・たぶん。とりあえずもらっておこうぜ。」
「そうだな。」
健太は銃のマガジンを確認した。残りは3発だけだった。そして腰に挿した。
射撃部だからだろうか、すごく様になっていた。
「たぶんまた死体を見ることになるかもしれないぜ。ほらちょっと血のにおいするし。」
と陽平。しかし返事は予想とは違っていた。
「俺も行くぜ、陽ちゃん。死んだやつのこと忘れねぇためにな。俺は決めたんだ。絶対この事件を忘れない。そして復讐してやるんだ。」
とても健太とは思えない返事だった。陽平はすごく驚いた。
「武車の言うとおりだと思うよ。あたいもあいつらを許せないからねぇ。」と美穂も答えた。
「分かった。でも覚悟しておいてくれ。たぶんあるよ近くに。」
案の定だった。10秒ほど歩いたところに3人の死体を発見した。
1人はぐちゃぐちゃで誰かは特定できなかった。あとの2人はすぐ分かった。学園のアイドル
和久井 優子(女子9番)五十嵐 慶吾(男子2番)だった。慶吾はぽっかり心臓付近に穴が開いており、優子は刺傷のようなものが心臓付近にあった。
見たところ大方、大量出血またはショック死と言ったところだ。
ぐちゃぐちゃの死体の横には普通の銃より一回りほど大きい銃が見つかったが弾切れだった。
健太の説明によると銃名は「デザートイーグル50A.E.」マグナムの弾をハンドガンで撃てるタイプで威力は絶大らしい。
欠点はあまりの威力の大きさに両手でないと使えないことと持つには少し重いことらしい。このぐちゃぐちゃの死体はこれに撃たれたと断定してもよさそうだ。
健太の長々しい銃の講座を聞かされている陽平の後ろでは美穂が手をあわせながら簡単な経を唱えていた。そして目が開いたままになっているクラスメートの目をゆっくり閉じさせてあげていた。
(柳生さんはやっぱり優しい人だ。あの凛とした表情に昔を思い出させる京都美人のような白肌、綺麗な人だぁ。)
陽平は美穂の様子をじっと見つめていた。
「なに見てるのよ!?」
少し怒られてしまった。見つめすぎたようだ。
「いやぁ、そのっ、え〜と・・・優しいんだな柳生さんはってね。」
「死んだものに経を唱えるのは柳生家のしきたりだから、当然のことをしたまでよ。」
陽平は健太を見た。何故か銃を構えていた。
「おい!何か来るぞ!?」
健太はあわてた様子で言った。
すぐさま銃の方向へ目を向けた。誰かが向かってくるのが分かった。見たところ2人組だった。
すごく静かになっていた。向こうから迫ってくる茂みのガサガサという音しか聞こえなくなっていた。
陽平はすぐに悟った。
「あれは・・・井上先生!?・・・」
「え!?先生だって?俺には全然見えないぜ。」
でも見慣れたシルエットだった。声をかけてみた。
「先生!先生なんだろ!?」
向こう側から声が聞こえた。
「ええ!?立花くん!?今そっちにいくよぉ!」
向こう側から2人が走ってきた。未だに健太は銃を構えたままだ。
「もう下ろしていいじゃないか?」
「いや、まだだ。まだ分からない。」
どんどんはっきり見えるようになった。間違いなく井上先生と女の子だ。
その女の子は
成本 愛子(女子2番)だった。
愛子は近づき美穂に飛びついた。
「美穂ちゃん・・・だよね?」
「成本さん!?生きてたの?」
一方の陽平はやっとのことで井上先生を見つけほっとしていた。
井上先生は3人の死体を見ると言った。
「まずここを離れよう・・・話はそれからです。」
皆、井上先生の指示に従った。陽平はすぐに先生の横を取り
「先生・・・頼りにしています。」
「分かっている。成本さんに全部聞いたよ。脱出考えているのだろう?」
陽平は無言で首を縦に振った。


(ここまで来ればええやろぉ)
江井原 大輔(男子3番)はF6の辺りに来ていた。最後に残った民家地帯の一部だ。
入ってすぐの家に入ろうした。E4辺りの森林地帯からずっと走ってきたので少し疲れてしまったのだ。
入ろうとした時に隣の家からすすり泣く声が聞こえた。まさか!?と思った。
大輔は隣の家のドアの前に立ち、話しかけた。
「空ちゃんやろ?開けてや。なんもせんから・・・」
ドアがゆっくり開いた。きしむドアの音が気に入らなかった。
ドアからぬっと人が出てきた。少し様子はやつれているが間違いなく
鷹山 空(女子1番)だった。
「大輔くん・・・どうしたの?・・・う、ううわあああん。」
大輔はいきなり抱きつかれた。気を抜いていたので倒れそうになった。そしていきなり爆発したように泣きつかれた。
「ずっとここにおったんかいな?大丈夫か?まあゆっくり中で話しようや。わいも前のままやったらお別れでけへんわぁ。」
大輔は泣きじゃくって離さない空を担ぎながら家の中に入った。




    
神様が用意したのは希望の再会と悲しみの再会




【残り 6人】と井上 和男


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