■第二部■ プログラム編 - 14 - 偶然 |
「ただいま午前6時でぇす。まずは犠牲者から男子5番 小宮山 大吾 8番 二宮 信人 はぁいこれで10人をきりましたよぉ。 今回の禁止エリア少し訂正するねぇE7をG1に変更しまぁ〜す。ということで禁止エリアはD5、6とG1、2となりましたぁ。 ごめんねぇ、わたしの連絡ミスですぅ。次回禁止エリアはF7とG6、7、8です。これで民家地帯はF6の以外は通れないよぉ。 さあもうちょっとでぇす。悔いのないように殺しあってくださいねぇ。」 この瞬間、希望の火はひとつ消えてしまった。小宮山の死。 「くっ、大吾が・・・そんな。」 立花 陽平(男子7番)は精神にそうとうなダメージをくらった。 正直にいうと気を保つのがやっとだった。キーとなる人間は井上先生と小宮山だったからだ。 その2つの内1つが消えた。残りは1つしか残っていなかったからだ。 (井上先生・・・先生だけが頼りだ。だから死なないでくれ!) そんな考えをしている陽平を知らずに柳生 美穂(女子8番)と武車 健太(男子10番)は気楽に話をしていた。 「でさぁ、柳生さんと陽ちゃんはいつごろ出合ったんだ?」 「さあねぇ、確か小1の時だったはずだよ。いやぁ、あの時のこいつったら弱かった。あたいがちょっと動くだけでビビっちゃってさぁ。 あの時はかわいかったよぉ。ねぇ、立花。」 「そんな昔の話しないでくれよぉ、恥ずかしいじゃないか。」 陽平は昔の恥話をさせられて顔を赤らめた。 健太と美穂はにぃとした顔で陽平の姿を見ていた。 剣道全国2位の陽平も昔はそんな感じだった。 「ああもう!やめろ。」 「あははははっは!」 3人はこの島全体に響きそうなぐらい笑った。こんなに笑ったのは修学旅行の前の日以来だった。 「絶対この島を脱出しような。」 陽平のその言葉に二人は返した。 「当然だろ(でしょ)!」 3人は固い握手を交わした。次なる目標は井上先生だ。 二宮 歌音(女子3番)は凍り付いていた。 さっきまで元気でいた兄・信人の死を聞き放心状態だった。 歌音が見る景色がぐるぐる回っていた。自分が何者であるかも分からなくなっていた。 そして兄が死んだことをまだ受けられなかった。 (どうして兄さんが・・・どうして・・・) 歌音の中で何かが崩れ落ちた。体が急に冷たくなってきた。 (誰のせい?・・・ふふふ、皆死ねばいいのよ・・・人間が憎い、この世にいる全ての人間が!) 崩れ落ちたのは理性だった。あまりのショックに歌音は理性を失ってしまった。 もう目の輝きは失われていた。飢えた獣のようなやつれた顔になっていた。 後ろから急に声をかけられた。声の主はクラスのアイドル和久井 優子(女子9番)だった。 「どうしたの?そんなやつれた顔して・・・大丈夫?」 優子は油断していた。クラスでは兄とベタベタでそれ以外の人とはあまり話さないおとなしいタイプだったからだ。 歌音が優子に襲い掛かった。支給武器であるスタンガンを優子の腹部にあてスイッチをONにした。 「きゃあああああ!」 あまりに強い電流を当てられ激痛を感じ倒れてしまった。 「何すんのよ!!」 優子は2つ銃のうち大きい銃のデザートイーグルを構え、歌音の胸に発砲した。 ダン、ダン、ダン! 歌音の心臓の付近から大量の血が流れ出てきた。 「あんた、あたしに何したか分かってんの?」 もう返事をしない亡骸に向かって優子はデザートイーグルの弾がなくなるまで発砲した。 顔に、腕に、お腹に、脚に。 デザートイーグルを至近距離から発砲したため返り血が激しく、撃たれた体も原型を留めていない。 「あたしこの銃嫌いだったのよねぇ。重いし弾少なし威力高すぎて扱いにくいし。あんたのスタンガンもらってくよ。」 優子は原型を留めていない亡骸からスタンガンを奪いその亡骸にスタンガンをかけてみた。 ボロボロの亡骸がビクッ、ビクッと動いた。 「あはは。なんか痙攣起こしてるみたい。」 気配を感じた。 「誰?」 優子は振り返った。誰もいなかったが気配はまだ残っていた。 「誰なのよ!さっさとでてきなさいよ!」 しばらくすると一人の人間が出てきた。女子にしては体格が良かったので男子と断定した。 「なんか用あんの?」 その人間は優子に近づいてくる。優子はとっさに大吾から奪ったベレッタを構えた。 「それ以上近づくと撃つよ。」 予想は当たっていた。五十嵐 慶吾(男子2番)だった。腰にナイフ、左手にはメリケンサック、右手には大きな四角いマシンガンを持っていた。 「誰かと思ったら温室育ちの五十嵐くんじゃない?政府のお父さんとは連絡とれたの?」 バカにした様子で言い放ったが慶吾の表情は変わらなかった。 「あたし、あんたが本当に嫌いだなぁ。いつまでそうやって黙ってすかしてるつもり?あんたのお父さん政府の役人でしょ!あの山本とかいうやつ、あんたのお父さんでしょ!知ってるわよ、あんたのお父さんがあたしのお父さん殺したんだから!!」 それは事実だった。優子の父は政府の関係者で今回のプログラム担任の山本は慶吾の父だった。 3年前優子の父は山本(五十嵐の父)の部下であった。優子の父は重要機密を漏らしてしまったため、処刑されてしまったのだ。 「何が「山本」よ!あんたの父はあたしのお父さんの仇でもあるのよ。最初にあんたを殺してやる。優勝したあかつきにはあんたのお父さんも殺してやる!あのクソ野郎をね。」 「父上をバカにするな!」 慶吾は本気でキレた。 「死ねぇ!」「あんたが死ねぇ!」 二人は同時に銃を構え発砲した。 だが二人の読みは違っていた。 優子は発砲しながら転がり込んだが慶吾は真正面から弾丸を受けていた。優子のほうが一枚上手だった。 倒れた慶吾を見て感無量だった。 (お父さん、やったよ。ついに仇の息子を殺したよ。あとは本人だけだね。) しかし落ちついている暇はなかった。新たな訪問者だった。 「いやぁ〜銃声聞きつけてきたら殺し合いしとったんかいなぁ。見事な茶番劇やったでぇ。うわっ、なんだこのぐちゃぐちゃな死体は。 それにこれは五十嵐かいな。見事に心臓を貫いてるなぁ。何処でそんな技術見につけたんや?」 ズカズカと寄ってきたのは江井原 大輔(男子3番)だった。 なにやら前とは様子が違っていた。真っ黒だった髪は真っ白になり、目の下にはなにやらおかしなペイントのようなものが施されている。 (なんなのこいつは?というよりこの状況は何?なんでこんなに人が集まるのよ!) 優子は戸惑うしかなかった。 勝負の分かれ目、それは一瞬の刹那 |
死亡 | 男子2番 五十嵐 慶吾 |
銃殺 |
死亡 | 女子3番 二宮 歌音 | 銃殺 |
【残り 7人】と井上 和男 |
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