■第一部■ 学校編 - 3 - |
「やあ!たあ!!めーん!!!」 「そこまで!!」 「立花の一本勝ち。両者、礼!」 立花 陽平(男子7番)と柳生 美穂(女子8番)は軽く礼をかわした。 (俺あんまり女子を相手にしたくないんだけどなぁ)と思いながら面を脱いだ。 柳生は腑に落ちない顔をしている。 (でも俺を相手にまともに稽古できるのは柳生さんぐらいだし、この際我慢するしかない。 とはいっても柳生さんは女子剣道では1位の実力の持ち主だしねぇ) そう一中の剣道部には男子剣道界2位と女子剣道界1位の猛者がいるすごい学校である。 立花は防具を脱いで帰る用意して学校をでようとした。校門では武車 健太(男子10番)が待ってくれているみたいだ。 「お疲れさん。練習に精が出ますねぇ。」 「当たり前だろ。これでも2位だからな。」 「まあそんなことより帰ろうよ。」 「あ〜腹減った。健ちゃん、売店でなんか買ってくれぇ。」 「今月は金欠だから無理。あきらめろ。」 「健ちゃんのケチィ!」 「うるさい!ちょっと黙ってろ。」 ・・・・・・・・・・・・・・てく てく てく (本気(マジ)で黙るなよ)・・・・・・・・・・・ 武車の家の前についた。 「じゃあな」 「おう、また明日」 立花は走り去った。(何かあったのかなぁ?) 荒木 孝則(男子1番)はサッカー部のエースストライカーなのだが謹慎処分をくらっていて修学旅行の日にやっと開放されることが連絡でまわってきた。 (あ〜あ。ただ髪を染めただけで謹慎なんてこの学校もきついところだなぁ) 荒木はそんなことを考えながら庭にある壁にボールをけっていた。 松元 和也(男子9番)と佐々木 守(男子6番)は2人で秘密の特訓を重ねていた。 「和也、絶対地方大会は優勝しようぜ。」 「守、そんな小さい夢じゃダメだ。世界一にきまってるだろ。」 「はは、相変わらず夢がでかすぎるな。」 「でっかく持った方がいいに決まってるだろ。」 彼らの特訓は夜中まで続いた。 「歌音、入っていいか?」 「兄さん?どうぞ」 二宮 信人(男子8番)はその妹二宮 歌音(女子3番)の部屋に入った。 「どうした?兄っ・・・」 歌音は唇に温かいものを感じた。信人はおもむろにキスをしたのだ。 「兄さん!?」 「こんなことしてるのを母さんや父さんに見られたらヤバイよね」 歌音は下を向いて顔を赤くしてしまった。 そう彼らは兄妹愛を越えて本当の恋愛に持っていってしまった。 決して許される愛ではないが彼らは満足なのだろう。でも気付いたころにはもう遅いだろう。もう引き返せないということを。 「はあ〜、やっと今日も仕事終わったなぁ 今何時やろぉ?」 江井原は時計を見た。午後11時32分だ。 「やべぇ〜、はよ寝なあかんなぁ。明日もグラウンド走るのはごめんやしぃ。」 江井原は帰ってきたらまず、テーブルの上をチェックする。 「おっ、今日は置いてくれてるなぁ。」 テーブルの上にはパンが入ってる袋とメモが置いてある。 『大輔くんへ 今日も仕事お疲れ様。パンが余ったので置いておくね。 それと明日は遅刻しちゃダメだよ。明日の1限目は修学旅行の 班分けとか係を決めたりするからね。 空より』 「そうかぁ、そろそろ修学旅行かぁ。そんじゃあ、明日は遅れんようにはよ寝るかぁ。」 江井原は床についた。よほど疲れていたのかすぐに寝てしまった。 ・・・親父・・・お袋・・・海・・・なんでわいを置いていくねん なんでわいだけ一緒にいけへんねん。あの時なんでわいだけ・・・ 「やめて!殺すなら私達だけでいいでしょ!」 「だめだ!江井原家の人間すべてを殺せといわれている。」 グシャ!ドスッ!ジュバッ! 政府の人間達の軍刀がお袋と親父のけい動脈を切り裂き、シュバーと音をたてて血が噴水のように出ている。辺りはもう血の海だ。 「やめろ!殺すなら海より先にわいからや。」 「だめだ!お前は江井原家の人間ではない。そこをどけ!!」 軍刀が大輔の目を切った。急に何も見えなくなった。 「う、海!逃げるんや!はよぅ!!」 「兄ちゃん!!」 シュバー ドサッ! 「う、海!?どないしたんや?返事せえ!!」 「いくぞ!我々の任務は終わった。」 「う、う、うわぁぁぁ!」 う、うわぁぁぁぁ!! 「はあ〜 夢かぁ。今何時やろ?」午前6時48分だった。 (またあの時の夢か。最近この夢ばっかりやぁ。うわっ、汗メッチャかいてるやん) 江井原は制服に着替えて外にでた。 (そうあの時、気がついたら目が見えんかったんや。病院におったみたいやけど、それも分からんかった。 あ〜あ あかんもうこのことは忘れるんや。いつまでも過去に縛られたらあかん) 「あっ、大輔くん。おはよう。」 「んん?空ちゃんかぁ。」 「大輔くんがこんなに早いなんて変な感じだね。」 「そうかなぁ。そんなことより時間大丈夫?」 「えっ!?」 時計は8時15分を指している。 「ああ〜、遅れるよぉ〜」 「しゃあないなぁ、走ろうかぁ」 江井原と鷹山は走り出した。 立花はず〜っと考えていた。 「なんだろうこの感じ。この修学旅行だだではすまないような気がする。なにかをなくしてしまいそうな。」 武車は昨日から気になっていたので思い切って聞いてみた。 「陽ちゃん、なにかあった?」 「んん?いや、別に・・・」 「なあ、俺達ずっと仲間だよな?」 「なんだよいきなり。当たり前 じゃん。」 「ごめん、変なこと聞いて」 「それより修学旅行たのしみだな。同じ班になれたらいいな。」 「ああ、そうだな。」 そう、分かる人間には分かるのだ。死が近づくことが |
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