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亘 洵(男子14番)は民家地帯のとある1件で寝転がっていた。 (あ〜あ、かったるい。殺し合いをしろ?何言ってやがるんだ、やってられるかよ!) 洵は支給武器である刃渡り30センチはある短刀を床に投げつけた。 ここにきてから洵はこれの繰り返しだった。特に目的もなく、人を殺すなんてできるはずもなかった。 だから、苛立つしかなかった。今は非常に機嫌が悪い。 その時ドアが開けられた。 「ああ!?誰じゃ!?」 「きゃっ、ごめんなさい!誰もいないと思っていたから。」 洵の記憶が正しければドアの前にいるのは森本 聖子(女子10番)だ。確か演劇部の部長のはずだ。 中肉中背でショートカットの特徴も少ない普通の女の子だ。 「あ、あの〜」 「何じゃ!」 聖子は少し後ずさってちょっと震えながら、 「私は出て行ったほうがいいのかしら?」 「好きにしやがれ。俺は知らん。」 「そんなこと言わないでよ。私だって恐怖でいっぱいなんだからぁ。」 聖子は泣いてしまった(ウソ泣き)。洵はさすがに困った。 「すまん、ちょっとイラついていた。女を泣かせるなんて男失格だな。」 (ふふ、私に演技に引っかかっている。バカな男。) 「私のほうこそ勝手に入ってきたりしてごめんなさい。」 「別にいい。これからどうするんだ?決めてるのか?」 「何がなんだか私には分からない。頭の中がちょっとパニくってるわ。」 「そうか・・・何もないならとりあえずここにいたらどうだ。俺も色々考え中。」 「ありがとう、亘くんってちょっと怖い感じがして話しかけられなかったけど実際は普通なのね。」 「まあこのしゃべり方は家のせいだな。俺の両親元ヤンキーだからな。」 「そうなの・・・ねぇ?喉渇いていない?何か飲む?」 洵は聖子の気遣いにちょっと驚きながらも平然としたふりをして、 「ああ、頼む。」 聖子が台所に向かった。まるでお母さんのようだ。 (俺のお袋も口は悪いが家事はけっこう真面目だったな。) 洵は家のことを不意に思いだした。当たり前にあった生活、今はもう戻らないかもしれない。 少し家のことが心配になったが親の顔を思い出すとそれを考えるのもバカらしくなった。 (どうせ親父とお袋のことだ、うまくやってるだろう。) 「コーヒーあるけど、コーヒー大丈夫?」 聖子の声だ。台所はうまく陰に隠れているのでこちらからは見えない。 「ああ、ブラックで頼む。」 洵はブラックしか飲まない、砂糖の甘ったるいところが嫌いだからだ。 「は〜い。こうやってると夫婦みたいだね。」 「へっ、言ってろ。」 (夫婦か、今の状態が1秒でも多く続けばいい。続かんだろうがな。) 聖子が台所から出てきて洵の隣に座った。洵はちょっと緊張ぎみな顔だ。 コーヒーを受け取って一気に飲み干した。聖子は満面の笑みを浮かべる。 「何で笑ってるんだ?」 「ふふふ、それはね。」 言い掛けた時、洵の体が1回浮かび上がり、その後吐血した。 「き、貴様。何をした!?」 出てくる血に対して口をふさぎながら洵は言った。 「毒薬。あなたのコーヒーに入れさせてもらったわ、すぐ人を信じるなんて・・・本当にヤンキーの息子?」 「く、くそ!この下郎が!ぐわっ!」 洵は倒れた。吐血は続き、さらに呼吸困難を起こした。薄れゆく景色の中洵は (へへへ、てめぇはろくな死に方できねぇぜ。) そして洵は息を引き取った。この間3分しか経っていない。 「さすが即効性の毒薬、やっぱ科学の力はすごいわねぇ。」 聖子は洵の短刀を奪い、小屋を後にしようと思って出て行こうとした。 入り口には女の子が銃を構えてこちらに向かってくる。 「栗山さん?どうしたの?」 明らかに普通の状態の顔をしていない栗山 奈央(女子4番)がそこにはいた。 「殺す、み〜んなわたしが殺してあ・げ・る。」 奈央は不気味な笑い声をあげる。聖子は本当の恐怖を感じた。 (やばい、ころされ・・・) 聖子の意識は途中で停止した。勿論奈央が発砲したためである。 奈央は聖子が握っていた短刀を奪い取り、 「またこれで殺せる・・・み〜んなわたしが殺すんだから。」 またも不気味な笑い声をあげて奈央は小屋を後にした。 そして今回初めての放送がかかる。 「どうも大川だ。どうやらいい調子で始まってるみたいだな。現在午後6時ちょうどだ。死んだやつら発表だ。 男子7番 須藤 11番 持田 さっき入ってきた13番 亘 女子は3番 小幡 さっき入ってきた10番 森本。 5人か、このままのペースだと2日目の最後ぐらいには終わるのじゃないか!・・・お前らナイスだぞ。最速記録更新かぁ。 禁止エリアの追加だ、A1〜4、B1〜4、C1〜4だ。分かったか?まあ島に侵入しようとしなければ大丈夫だ。 まあがんばれ、死ぬ気で戦えば勝てぬ戦はないぞぉ。さっさと殺しちまえ!じゃあな。」 (くっ、もうそんなに犠牲者が・・・俺は何をしている。) 福田 聡明(男子9番)は禁止エリアを書き足しながら自分の無力さに腹を立てていた。 最初に出会った竹之内と高橋はまだ生存しているようだが非常に心配であった。 暗い気持ちだけだけが聡明を襲った。とても正気の行動とは思えない。 (考えても仕方ない。とりあえずこの島や今おかれている状況を把握しなければ・・・それからゆっくり考えよう。) 聡明は禁止エリアと犠牲者のリストを書き足し、今夜仮眠が取れそうな場所を探すことにした。 その時正面に歩いてくる影を見つけた。まだ明るいのですぐにその人物を特定できた。 (女の子?倖村さん?) そうその人物は紛れもなく倖村 刹那(女子12番)だった。 どうやら向こうもこちらに気付いたようだ。しかし、歩くペースは変わらない。 「倖村さん、だよね?」 「あら、福田くん。ごきげんよう。」 少し貴族っぽいしゃべり方、倖村さんの家はお金持ちだと聞く。 おっとりしていて、とても大人しい。座る姿は背中に鉄板でも入れているようにピンと張っている。 立っている時も同様、姿勢がとてもいい。可愛いではなく美しいのほうがいいのだろう。 しかし、あまり現代の人間が好きになりそうな顔ではない。少し路線はずれなポニーテールなのがネック(らしい) 聡明は外見など全く気にしないのであまり大そうなことはいえない・・・というより分からないのだ。 そんなことよりもっと聞きたいことがあるし、注意したいこともある。 「あの、一ついうけどその武器をぶらぶらと持ち歩いていると他の人に誤解されるよ。」 倖村が右手に握っていたのはP−90といわれるマシンガンだ。たぶんこの大会の最高の武器だろう。 「あら、そうですの?これは失礼しました。」 倖村はせっせと武器をカバンの中に入れた。 「福田くんは何をされていらっしゃったのですか?」 「私ですか?私はこの状況を打破すべく色々考えていたところですよ。」 聡明は口調を変えた。 「そうですの・・・そんなに堅いお言葉を使わなくてもよろしいのですのに、もしよろしければお供させていただけますか?」 「そう・・・って、ええ!?どうしたのいきなり?」 「私一人では心細いですし、福田くんがここに来てから初めて会った人ですから。」 「う〜ん、別に構わないけど・・・危険があると思うし、命の保障はできないからね。」 「構いませんわ。私、部活動には参加しておりませんが武術の心得は持ち合わせていますわ。」 「そうなの!?俺も合気道ぐらいはしてるけど・・・すごいね。」 「特別扱いはやめていただきたいわ、私はただの学生ですわ。」 (雰囲気はまるで貴族だけど・・・なんて言えないけどな。) 「分かった。じゃあこれからよろしく、【聡明】と呼んでくれていいよ。」 「分かりましたわ、聡明。では私は【刹那】で構いませんわ。」 (え?呼び捨て!?) 「うん、でも倖村さんのほうが呼びやすいからそっちにするね。」 「じゃあ今夜のお宿探しですわね。行きましょう、聡明。」 (やっぱり呼び捨てだ・・・まあいいか。) 先に歩こうとする刹那を後ろに付いていきながら聡明は |
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