プログラム編 5
等価交換
赤田 結衣(女子1番)氷神 純也を尾行してから3時間。
現在結衣はE6の北側にいた(当の本人には正確な位置は分かっていない。)
さすがに3時間休み無しで歩くのは運動部に所属していない結衣には厳しいものであった。
その思いが届いたのか純也はそこで立ち止まった。

純也は目の前にあるものに絶句した。
(なんだ!?この白骨死体は!)
目の前にあったのは白骨化した死体だった。
その死体は胸に剣を突き立てられていた。ちょうどその後ろに石碑があった。

『白銀の獅子 ここに眠る 最後まで愛を貫き 政府に貢献した者』

(白銀の獅子?誰だ?まあ立派な人だったのだろう。)
純也は合掌して深々とその死体に礼をした。
そしてその突き刺さった剣の柄を握った。
(でも、今は武器が必要だ。悪いが使わしていただこう。)
引き抜こうした時、首輪に無線音らしき音がした。
“ダメダメ、それは使っちゃダメ。昔の政府の英雄のお墓の代わりなんだから。”
「悪ぃ。でも武器なし、飯なしはきつ過ぎる。」
“仕方ないねぇ。じゃあ武器だけあげるからそこで待っていなさい、最後のカバンに入っていた武器ですよ。”
3分後、とてつもなく大きな音が上空からした。どうやらヘリが上空を飛んでいるらしい。
そして、上から何かが落ちてきた。落ちた時に変な金属音がした。
ヘリは用事が終わったのかそのまま帰っていった。
純也は落ちてきた物体を確認した。
(・・・これは・・・刀?いや、欧州の刀の形だ。)
立派な装飾ではなくシンプルな柄、自分の体にあった刀身、それを収める鞘でさえその重さを感じさせる。
純也は鞘から剣を出して一度振ってみた。ブンっという風の切れる音がした。
そしてすぐに鞘に収めて腰のベルトに巻きつけた。
(おいおい、それで隠れたつもりか?バレバレなんですけど。)
実は純也は尾行されているのに気付いていたのだ。
純也の気配が一瞬で消えた。

結衣が瞬きを1回した後のはもうそこにはSPゲストの姿は見えなかった。
(もしかして見失った!?大変、追いかけないと。)
走り出そうとしたその時、体が一瞬凍りついた。何者かに声をかけられたのだ。
「動くな。」
結衣は言うとおりにした。ここで抵抗して相手の怒りを買うのはよくないと判断したからだ。
カチャリ、何かと何かが当たるような音がした。
(まさか・・・そんなはずはない。)
冷や汗が一滴右の頬を伝い落ちた。落ちた汗が雫となって地面に染み込んだ。
足音が近づいてくる。
そして刀身を後ろから首の辺りの近づけた
「名前は?」
そんなに声は低くないが男だ。悪意は全く感じられない。
「赤田 結衣。」
「ここにいるやつらは全員中学生か?」
「そうよ。修学旅行のバスの中で拉致されたの。」
「なるほど。実は俺、脱出考えているんだ。このクラスに同じ考えを持った人間はいそうか?」
「分からない。けど木佐貫くんならそうするかも。」
「男子か?どんな姿だ?」
「そう男子。短髪でいかにも野球部って体つきの子だよ。」
「なるほど、分かった。ありがとう、世話になったな。悪いが後ろを振り向かないでくれ、顔は知られたくない。」
「あ、ちょっと待って!」
走り去ろうとした後ろの人物に言った。
「どうした?何かまだあるのか?」
「私に質問したんだからあなたも質問に答えるのがスジじゃないの?」
結衣ははっきりした口調で言った。
「確かにそうだ。じゃあ次は俺が答える番だ。好きにしろ。」
「名前は?」
「氷神 純也。君らと同じく15歳だ。」
「あなたはどうしてここにいるの?」
「ただの規則違反だ。」
純也は淡々と答える。
「どうして姿を見られたくないの?別に隠すこともないんじゃないの?」
「そんなに姿が気になるなら後ろを向けばいい。」
意外とあっさりしてると思いながら結衣は後ろを向いた。
一人の少年がこちらを見ている。
身長は結衣よりはるかに高い。体つきもそれなりだ。
しかし、顔がちょっと女の子っぽくいわゆる「中性」な顔立ちに見えるのだが傷だらけの顔がそれを分からなくさせている。
目の色も少しおかしい、色がすごく曖昧で真っ黒ではない。メガネのおかげで少し穏やかな顔にも見える。
「どうした?そんな怪物を見たような目をしてもらっても困るな。」
「ご、ごめんなさい。」
「何故謝る?まあいい。質問はこれだけか?」
「氷神くんは脱出を考えているんだよね。じゃあ私も仲間に入れてもらえるかな?」
「別に構わないが・・・じゃあゲームしようじゃないか。」
結衣は一瞬「んん?」と思ってしまった。
「どういうこと?」
「ルールは簡単、3つの約束を守りながら一緒に行動するだけ。ここできっちり約束しておけば後が楽ってことだ。」
「ふ〜ん、こんな状況なのによくそんなこと思いつくね。」
「ははは、ただ享楽主義者なだけだ。」
「じゃあ私からいいかな?なんかおもしろそうだし。」
「もう思いついたのか?このゲームのセンスあるかもな。」
「分からないなぁ。う〜ん、@私を守る。なんか女王と騎士って感じで面白くない?」
「なかなか難しい条件だな。第一絶対守れるなんて保障はないしな。」
「ふふふ、頑張ってね。Aは殺人は絶対ダメ。」
「ああ、それは守る気でいた。大丈夫だ。」
「Bは・・・何にしようかなぁ・・・」
結衣はちょっと悩んでいた。純也もそれに気がついたらしい。
「別に温存でもいいけど。また思いついたらいえばいい。」
「じゃあそうする。」
「まあとりあえずは
@私を守る
A殺人はダメ
この2つでいいんだな。」
「うん。」
「じゃあ俺はまずは1つだけだ。あとの2つは・・・後でいい。」
「で、その1つって?」
「ROB YOUR VIRGIN」
それを聞いた結衣は呆れ顔になった。
「氷神くん、それの意味知って言ってる?」
「無論知ってる。これは等価交換だと思うが?」
「どこが!?」
結衣はちょっと真顔だ。それに対して純也はとぼけ顔。
「う〜ん、とりあえず仲間に入れてあげたし、@もAもなかなか難しい条件だ。これでいいか?」
「うっ、でもちょっとひどすぎるよぉ。」
「仕方ない、じゃあ俺が条件を全部守れてここから無事に脱出できたらその約束を守ってもらう。どうだ?」
「う〜ん・・・」
また結衣は悩んだ。どうやら純也は悩んでいる姿を見るのが愉快らしい。
「まあ一生に関わる問題だからな、じっくり考えるといい。てかいっそのこと俺を好きになっちゃえ☆」
「ははは、そんな手もあるかもね。そうだね、たぶんここで死んじゃうものね。それで手を打つことにする。」
死ぬのならこの約束をしたって同じ、と結衣は思った。
「いいのか!?なかなか面白い人だ。だが、俺は死なせないよ。約束は守らすからな。」
「ふふふ、頑張ってね。これからもよろしく、氷神くん。」
結衣は握手を求めた。
しかし、純也は不満そうだ。
「握手なんかじゃ緊張感わかないな。目を閉じてみてくれ。」
結衣は言われたとおりにした。間違いだった。
純也の思惑通りキスされてしまった。結衣は動揺を隠せない。ついには泣き出してしまった。
「どうした?ちょっときつかったか?」
「は、初めてだったのにぃ・・・氷神くんのバカ!!」
「ご、ごめん。いやぁ、中学生ぐらいだったらとっくにキスぐらいと思って。」
「バカバカバカ!!」
「何もそこまで。本当に悪かった。」
「本当に反省してる?」
結衣は少し上目遣いだ。
「本当にだ。」
「じゃあ、許す。」
純也は頭をかきながら、小さく息を吐いた。
「あ、どう呼べばいいのかな?「結衣」でもいいか?俺女の子は名前で呼びたいんだ。」
「別にいいよ。あと、氷神くんのことたくさん教えてよ。仲間なんだから。」
「分かったよ。真実聞いて倒れるなよ。じゃあ次の目的は木佐貫とかいうやつを探すことだな。」
「そう分かれば、レッツゴー!」
「う〜ん、それにしても結衣は立派なものを持ってる。」
結衣は純也の視線をたどった。案の定そういうことというのがよく分かった。
顔を赤らめて、隠して言った。
「本当に氷神くんのバカ!」
(これでも私、気にしてるんだから。)
「ははは、元気でなによりだ。」
「オヤジ臭ぁ〜。」
「うるせぇ。結衣にはまだ分からないだろうな。」
「何が?」
「いや、何でもない。」
純也は少し悲しそうな顔になった。
結衣は何故そんな顔になるのか、まだ知ることもなかった。
感情のこもっていないキスは冷たいものなんだね
by 赤田 結衣

手に入れたのは「力」手放したのは「欲望」この意味分かる?
by 氷神 純也

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