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栗山 奈央(女子4番)は非常に精神状態が不安定であった。 (わたし、殺した・・・人を殺した。) 奈央はその人を殺めた道具である銃(グロック17)を見つめた。 (でもしかなかったのよぉ、だってあの須藤君が・・・襲い掛かってくるなんて。) 奈央は親友である中野 歩(女子8番)を待つために校門の近くの草むらに身を隠していたのだ。 髪をワインレッドに染め、ショートヘアー。体系は中学生平均ぐらいで陸上(長距離)をしているので体力には自信ありだ。 だから、あゆみが来る前に襲い掛かられても逃げれる自信があったのでそうすることにした。 須藤 大輝(故 男子7番)が校門から出てきた。 そして、そのままこちらに向かってくる。きっと私と同じで誰かを待つのかしらと奈央は思った。 が、しかしそれは大きな間違いだった。 なんと須藤が襲い掛かってきたのだ。安心しきっていた奈央は慌てていた。 「だめだよ、武器を持っては。殺人や復讐からは何も生まれない。」 どうやら須藤は奈央が銃を持っているのに反応してやってきたようだ。 須藤は強引に奈央から銃を奪おうとする。 「これは違うの、やめて。」 もみ合いをしている内に奈央は引き金を引いてしまった。 銃声の後、須藤は倒れた。どうやら腹部に被弾したらしい。 「ち、違うの・・・きゃあぁぁ!」 奈央はその場から疾風のごとく去っていった。 奈央は「これは事故だ。」と自分に何度も言い聞かせた。 しかし、罪悪感のほうがさらに上だった。今にも罪悪感に押しつぶされそうだった。 奈央は銃を落として、顔を両手で覆い、ペタンとその場に座り込んでしまった。 時間が止まった気がしたがそれもつかの間だった。 声をかけられた。聞き覚えのある声だった。 同じ陸上部の持田 和彦(男子11番)だった。 奈央はすがるように和彦に抱きついた。和彦とは特別親しい関係ではなかったが今の奈央はそうしていないと崩れてしまいそうだった。 「栗山さん・・・何かあったの?・・・もしかしてその腹部のやつは血痕!?」 「ち、違うの!これは私がやったんじゃない。」 「栗山さんがそんなことするなんて・・・見損なったよ。」 「だからちがっ」 「何が違うんだ!証拠があるじゃないか!栗山さんは悪に染まっちゃったんだね。」 奈央は返すことができなかった。 「これ以上犠牲を増やすわけにはいかない。ここで排除しなければ。」 そう言うと和彦は自分の武器であるカッターナイフを奈央に向けた。 「やめて、持田くん。」 「ダメだ。いくら栗山さんでも・・・」 和彦は奈央に切りかかろうとした。 (持田くんはそんな人じゃなかった。平気で人を殺すなんて・・・) 奈央は400メートル走を10回した後でかなり疲労が溜まっていた。 目に映る景色もぼやけてきた。そしてそのまま意識を失ってしまった。 ・ ・ ・ 気がつくと保健室にいた。あのアルコールの独特なにおいがしたからすぐに分かった。 しかし、何故自分がここにいるのか分からなかった。 「あれ?私練習してたはず。」 「やっとお目覚めかい?もう7時だよ。」 声をかけてくれたのは和彦だった。 「どうして?って顔してるね。」 奈央は素直にうなずいた。 「君は練習中に倒れたんだ。少し無理をしてしまったみたいだね。あまり無茶はしちゃダメだよ。」 「そうなんだ・・・持田くん今まで看てくれてたの?」 「まあ、部員のことだしな。部長として当然のことしただけだよ。」 「ありがとう。」 「どうも。」 奈央は真心で感謝した。起きるまで見てくれるなんて思ってもいなかったからだ。 起き上がろうとする奈央に和彦は手を貸してあげた。 奈央は和彦と一緒に帰ることにした。 「大丈夫か?気分が悪くなったら言ってよ。」 「だ〜いじょうぶ。それにカバンまで持ってもらってるしね。」 和彦は重いカバンを2つ持っていた。 「まあ、部長だからな。」 「本当に部長だからなの?」 奈央を含みのありそうな発言に和彦は返答に困った。 しばらく静寂があった。 「君は陸上部のエースだし、いつもがんばっているから試合の前に体を壊したりしたらイヤだしね。」 「気を使ってくれているんだぁ。」 「部長だからな。」 「またまたぁ、そればっか。」 奈央はポンと和彦の肩を叩いた。和彦が少しよろめく。 「で、話変わるけど持田くんには夢とかあるの?」 「夢?ないこともないけど。どうして今?」 「だって持田くんとかえるの初めてだし。」 「警官。悪を打ち砕き、正義を守る。これが夢。」 「なんか特撮ヒーローみたいで子供っぽいね。」 「いいだろ、別に。栗山さんは何?」 「私はね・・・秘密。」 「あ、ずりぃ。」 二人の会話は終わること知らなかった。 銃声・・・ 数秒後に和彦は紙のように力なく倒れた。頭部に被弾したため即死である。 「持田くん・・・持田くん。」 奈央はもう返事がない和彦を揺さぶった。無論、返答はない。 (また私殺した・・・殺した。) 奈央の中にあった何かが崩れ落ちた。 (皆どうせ死んじゃうんだ。じゃあ、いっそのこと私が殺してあげようか?ふふふ、殺す殺す殺す・・・殺す?) 奈央はおもむろに立ちあがり向こうのほうに去ってしまった。 その目には生気はなく、ただ狂気のみが煌々としていた。 |
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