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「お帰りなさい、陽平さん。」 「ただいま、愛ちゃん。」 一ノ瀬 愛、それがこの子の名前。実は年齢は陽平より3つ上だ。 愛はそのままリビングに向かっていった。どうやら健太と話をしていた最中のようだ。 彼女との出会いは健太にたくさんの影響を与えた。 「似てる・・・冬野に」 「青柳 みの」が率いる反乱グループとの接触を図ることが出来てさらに同盟まで結びさらにおまけにそのメンバーでもある「八橋 凛」を仲間として貸してもらうことできてからもう3ヶ月になる、カズからは1年後には帰ることが出来ると連絡も入った。 未だに救護できる人間が集まらないのに憤りを感じていたある日曜日の夜、偶然健太と愛は出会うこととなった。 <夜の通り> とある県の街中にあるメインストリートを夜中に健太は歩いていた。特に用事があるわけでもないフラフラと歩いているだけ。 この時間になると変な人間どもが現れだす、体を売ってる人間に、ヤクでイかれているやつ。そんな中健太は用事もなく歩いていた。 そこに一人の大男がこちらにやってきた。手には鉄の棒を持っていた、目が左右に何回も動いているのでたぶんヤクをやったのだ理解した。 「死ねぇ!!!!!」 大男は鉄の棒を思い切り振り下ろした。 ドンッ! 健太の持っていた銃からは煙出ていて、大男はそのまま地面に倒れた。見事に弾丸が大男の胸の中心にめり込んでいた。 血は温泉がわいてくるような勢いで出てきている。健太はそんなこともなかったことのように傍を通り過ぎていった。 この国では夜はこんなことが起こってもなんと言うこともなかった。毎日人が死んで当たり前。 朝の通勤時間が始まる前に死体処理班がやってきて廃棄処分するだけだ。 健太が30分歩いただけなのにさっきみたいな状況には3回も遭遇していた。正直うんざりだった。 しかし、健太は週に1回こういう風に町を歩いている。1人になる時間がほしかったからだ。 健太はまだ忘れられなかった。同級生で健太が初めて恋心を抱いた女の子「冬野美春」のことが。 こうして歩いている間はそのことを考えたりもする、が健太はそろそろその感情も薄らいできたと思った。 もう彼女と永遠の別れをして3年にもなる。薄らがない方がおかしいと自分に言い聞かせて忘れようとする自分もいる。 でも・・・忘れられない・・・ さらに30分ぐらい歩いてようやく通りを歩ききることが出来た。 健太は向こう側から走ってくる女性を確認することが出来た。「女性」というより「女の子」の方が適当かもしれない。 身長は155センチぐらいでピンクの髪の色していて肩口あたりで切り揃っているようだった。 その女の子はこちら側に走ってきて、健太の背後につき 「わたし、今変なやつに追いかけられてるの!助けて!!」 「俺はこんな真夜中にこんなとこをうろついているやつのほうが変なやつだと思うぞ。」 その女の子はもうしゃべらなくなってしがみついたままであった。 向こうから追いかけてきた男の方もすぐに確認できた。健太はまた標的に向かって銃を構えた。 渇いた銃声がこの通りをこだました。男は数回痙攣した後、すぐに動かなくなった。 健太は後ろにしがみついていた女の子を引き離し振り返りながら 「もう、こいつは死んだ。じゃあ・・・っ。」 健太は頭を抱えた。その女の子を見た瞬間ビビッと心に響いた。 (この子、似てる・・・冬野に。) そう思ったとき急に胸が締め付けられような感じがした。もう忘れようとしたものがまたよみがえってきた気分だ。 その冬野に似た女の子は話しかけてくる。 「あ、あの・・・ありがとうございました。」 「いや、別に・・・もう用はねぇだろ。さっさと消えろ。」 「ちょ、ちょっと待ってください。できればお名前を・・・」 「武車 健太・・・君は?」 「一ノ瀬 愛です。本当にありがとうございました。」 一ノ瀬と名乗った女の子はそのまま夜の闇に消えていった。健太の心は晴れないままだった。 <一週間後> またこの時間がやってきた。しかし、健太はいつもとは何が違っていた。 何となく周りを気にするように歩いていた。自分でもそれに気付いている「また会えないだろうか。」 そう思いながら歩いている・・・いつものようにヤクでイかれている野郎を銃で殺しながら前へと進む。 正直、ここまで人を殺していると逆に自分の方が「殺戮者」となっているのではないのかと心配になってくるのだが、これは自己防衛である。襲い掛かられたらなんらかの対策をとらなければこちらがやられてしまう・・・だから健太はやつらを殺す、どうせヤクやってるやつらなんざ元には戻れない。 そんな思いにふけているともう通りの端まで来てしまった。健太はしぶしぶ帰路に着こうとした時、向こう側から走ってくる女の子を確認することができた。またもピンクの髪である。 闇夜の中に走ってくるピンクの髪の女の子がまた自分の背中にしがみ付いてきた。 「どなたか分かりませんが助けてください。」 健太は無言のまま女の子を抱えるようにして路地の中へ入っていき、そこで女の子を問い詰めることにした。 「お前はどうしてこんなところにいる?何が目的だ?」 「わたしは売人をやってるの・・・麻薬の。家がね、医者してることもあって薬のことなら何でも知ってるから。」 「そうか・・・でも、お前は間違っている。麻薬がどういうものかを知っていながら犯罪に加担するのか?」 「違うの!わたしはただ家を守りたいだけ。患者さんは全員都内の国立病院に連れて行かれちゃったから、私の家には収入が入ってこないの。だから!」 「じゃあ何か?自分の家計を守るなら他の連中がヤクで狂っても構わないと。」 「違う!そんなのじゃない・・・ただ、家を救いたかっただけ・・・それなのに、どうして・・・こうなってしまったの・・・自分でも分からない。」 愛は顔を押さえながら泣き崩れた。健太は内心つらい気持ちでいっぱいであった。 (泣かないでくれ、もうやめてくれ。どうして俺の前に現れたんだ!?もう、俺は苦しみから解放されたのに。どうして冬野にそんなに似ているんだ?どうしても押さえられない衝動が俺の中にあるのに。この少女に冬野をかぶせようとする自分がいる。もう帰ってこないものを他人に押し付けようとしている。それは冬野にとってもこの子にとってもいけないことなのに・・・畜生!) 「そうなってしまったのはこの国の政府だとは思わないか?どうだ、俺を一緒にやつらの顔面を殴りに行かないか?俺には君の力が必要なんだ。」 意味は2つある。 現実問題として医学の知識を持っていそうな人物は必要。 それと・・・これは健太の「わがまま」・・・彼女のことを忘れないように似てる人物をそばに置いておきたい。 「わたしなんかで大丈夫でしょうか?」 健太は「ああ。」とだけ答え、愛を引き寄せて強く抱きしめた。 「痛いです、武車さん。」 「武車じゃない、健太って呼んでくれ。」 「健太・・・」 健太の瞳からは一筋の涙が流れていた。 一ノ瀬 愛 リベリオンズ参加!! 健太が愛の実年齢を聞いたのは仲間になってから3日後のことであった。でも、彼らにはそんなことは関係ないようだ。 「愛、お茶入れたから飲まないか?」 「そうですね、せっかくだからいただこうかな。」 二人はいつもこんな感じでおっとりと生活しているようだ。陽平はそんな二人を見て、 (俺と柳生さんも進展があるのだろうか?俺は気持ちを前面に出しているつもりだが彼女には伝わっているのだろうか?) そんな思いにふけているともう昼の12時になっていて皆が昼食をとっていた。 「陽平くん、食べないのか?」 「カズか・・・今行く。」 リベリオンズの昼食はとても明るくてにぎやかだ。陽平はこの時間が一番好きだった。みんなの笑顔がたえない、笑い声が聞こえる。 でも、それも今日まで明日は作戦会議、明後日はにもう作戦開始である。 皆の食事が終わった後、陽平は 「明後日は作戦開始だ。そろそろ各員準備に入ってもらいたい。」 皆揃っていなかったが「了解。」という返事があったので少し安心した。 その時、玄関のチャイムが鳴った。 陽平は玄関に向かうと 「ただいま、帰還しました。」 「お疲れさま、フェンリル。」 そのフェンリルという人は真っ先にゼットのほうに向かっていった。 「ゼット、ただいま帰還しました。」 「お疲れさま、じゃあさっそく始めますか。」 フェンリルとゼットはそのまま自分達の工房に向かっていった。 陽平たちのアジトには工房も用意されている。もちろん、武器を製造するためにある。ゼットは鍛冶(ブラックスミス)もできる武器のスぺシャリストだ。フェンリルはその付き人だ。 フェンリルというのは女性である。腰に届きそうなくらいに長い髪で色は透き通った水色、燃えるような赤色の瞳、身長は172ぐらいはありそうでその姿は一流のモデルのようであった。 しかし、彼女にはリベリオンズでは陽平とカズ、ゼットにしか分からない秘密があるのだ。 「あなたは誰?」 |
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