■第一部■ - 15- 二人の天才 |
「ふぅー、あー痛ぇ〜、くそぉ〜右手使えねーよ、馬鹿!」 と、さっきから自らテントに入れと言ったのに、何も物事の進んでいない状況である、及川も色々説明したそうだ… 「なぁ、話聞いてくれるか?他の3人も待っているんで、右手痛いのも分かるしさ、な、助けてくれたのもありがたいけど、まず俺の話を聞いてくれ。」 そういうと、違う班の男子10番 真代 公正との出会いを話し始めた。 「で、そこからきて―」 「あぁ、もういいよ、言わんとすることは分かったから。」 「は?話の途中ってか、半分だぜ、分かるのか?」 「あまりにも長いんで、うちの班員さんが退屈してね、遅いし時間が」 そういわれてみれば、女子4番 風見 呼春が寝息を立てて寝ている、それに男子3番 川津 勇介も頭が上下にコクリコクリと動いている…ギブアップらしい。 「ま、そういうこっちゃ、そうだ将、お前に頼みたいことがあるんだけど…いい?ま、要するに…って事、理由は…があるかも知れないから、簡単だろ?」 そういわれると頭をかきながら「いやぁ〜、でも…参ったなぁ〜お前中1で初めて会ってから、俺にろくな事頼んだこと無いなぁ〜…」 「じゃ、この話は無しで、俺は俺でやっちゃうけどなぁ〜すごいチャンスやのに…」 「待て!待てよぉ、いじめるなってそんな俺を…わーった分かったよ!やればいいんだろ、分かりましたよ、このスケベ大王め」 そう言われる奥は、眉間にしわを寄せながら「今その話は関係ないだろ、今俺は珍しく真剣なんじゃ、25年に1回あるか無いかだぞ」 「ちゅーとはんぱだなぁ〜相変わらず」 「まぁ、いいさそうそう、後これ」 と言うと一枚の紙切れを手渡した。 「これな、殺る気のあるやつに出くわしたら…見ろ、今は絶対見るな、意味が無い」 「分かった、今、奥に会えてよかった、最後かもしれないけど…言っておくよ、『またね』」 「ああ、分かった、最後は余計だ、絶対俺が何とかする、この命に代えてもね」 ・ ・ ・ ・ 「ふざけんなよ!何でこんなゲームに!」いきなり叫びだしたのは男子9番小野寺 尚人だ。 「大体よぉ、生き残れるの3人だろ、俺が頑張ったとしても…一人死ぬんだろ…くそったれたゲームだぜ!」 「おい、真代、お前いっつもさ、何か不良に絡まれたとかでいじめられてたよな、いっそお前殺して、俺らだけで生き残るってのもありかなぁ?」 尚人は意地悪く喋った。 「ふざけんな…ざけんじゃねぇよ!僕だって死にたくないんだ!」 すると真代はデイパックからヘッケラー&コックMPハイグレードを取り出して、駆け出していった―これが後のこの班にどれだけダメージを与えたことか… 「絶対僕だって!殺せるんだ!…そうだ奥だ、川津だ彼らを殺せば、尚人だって考え直してくれるかも…」 すると、闇の中を駆け出していった。 ガサガサ「何だぁ?」と言って外に出た男子11番及川 将は、驚くべきものを目にした。 「殺す・認められる…いいサイクルだなぁ…」 と言うと、2班のテントへ駆けていった… 「ま、待てよぉ!!」その後のことは、及川と2班の面子しか知らない… ・ ・ ・ ・ 「ねぇ、小野寺君…愛と命取るとしたら…どっちとる?」 「さぁねぇ?ま、俺は天才だからよ、どちらも取れるんじゃねぇ〜の?」 「あはは、まったく人を馬鹿にしているような感じだね、それが小野寺君らしいけど」 「ま、いつもどおりさ、俺は」 ある休日、クラスでも1・2を争うグッドカップルの男子9番 小野寺 尚人と女子9番 月影 郁美だ。 小野寺を紹介すると、野球部の天才レフト小野寺 尚人様(自称)であるが、しかし野球の腕は半端じゃない。まさに天才と言った感じである。 野球の大会ではいつも「4番 レフト 小野寺君」と1年のころから呼ばれ続けていた。 2年の夏休みまでは「1番 ピッチャー 奥君」もあって、「青森のダブルオー」と呼ばれるほど、実力があった。 奥がヒットで出塁すれば、盗塁・バントで3塁までいく、そして3番の3年生が打てば、小野寺は華麗にホームランを放ったし、打たなければ、しっかりと安打で返した。 そして、滅多に打たれることの無い奥が打たれれば、小野寺がマウンドに上がり抑えた。また、レフト線のヒットやファールもダイビングキャッチで抑えた。 とにかく、すごかったこのコンビは、まさに「完全無欠」のコンビだった。 そして、この二人が原動力となり2年の春に東北地方制覇までした。 ただ、小野寺は野球を取れば、ルックスとベースが上手いくらいしか残らないような極端な男だった その点、奥は野球を辞めても、頭もそれなりあであったし、知識が広かった、「おじの影響だよ、無駄過ぎる…」と喋っている。 でも、この二人は仲がよかった。バンドを組んで開いた影響も多いようだったが。 ただ、この学校は非情で成績でクラスを決めていた、そのため奥と小野寺のコンビは球技大会などでは見られなかった、他の人は「奥と小野寺が組めばなぁ、最強だぜ」と言うほど仲がよかった。 でも、奥と小野寺は「ああ、そうかもな、でも嫌だぜ、あのアホを助けるのは大変だぜ」とお互いに言っていた。 それほど信用していた、お互いに敬愛していた、でも今この二人は殺しあわなければいけない状況になっている。皮肉だ…あまりにも…誰もが思うだろう、だがそれを一番感じているのはこの二人だろう。 「小野寺君…私幸せ者だね」 「はぁ?」 「天才小野寺 尚人様の彼女なんだから…」 「ああ、当たり前さ。」 プログラム開始1週間前の話である。 いつも話は知らないところで進んでいる、いつも勝手なオトナ達の都合で― |
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